山田ミネコの最終戦争伝説な歴史


   
 定価 380円

 
 発行 1988/08/01
中期のヒット作品。この話でケーキを好きになった読者の数は多そうだ。

第9章「徳間書店の逆襲」

 徳間書店の裏切り、デュオの休刊というダブルパンチで乗り越えた前年。
 SFアニメディアにて「アフメット王国シリーズ」を連載し、ビバプリンセスにて「ふふふの闇」を連載し、ついでに春コミにも応募して傷心の痛手を癒す。

    
      中古雑誌 月刊少年キャプテン 1989年1月18日号

 待っていてもパトロールシリーズが復活する事はなく、少年キャプテンの創刊と「風の谷のナウシカ様」に「となりのトトロ様」という金のなる木をぶら下げた徳間書店の迷走っぷりに翻弄されたリュウは、百合萌え雑誌へとワープ進化を遂げ、あまりの変貌にミネコ氏はタンスに頭を打ちつけた。
 そんな矢先、エンマ様似の担当さんより「鬼のような指令」が届く。

     
   中古雑誌 SUPER MINOR COMIC リュウ 1986年5月号 VOL.4

「パトロールシリーズだけで、増刊号を出すことにしました。
 なので、150ページくらい描きおろしてください。
 締め切りは3か月後でカラー表紙カラーイラスト満載でお願いします」

 抗議のカミソリメールが届いたか、それともうっかり忘れていたのか、その経緯まではわからないが、二誌での連載を抱え挿絵の依頼まで届いていたネコさんは文字通り「ペレランドラに帰りたくなった」が、読者はパトロールの続きはまだかと催促していたのも事実だし、何より人気シリーズを完結させるチャンスを逃す手立てはない。
 春コミ予定の原稿は後回しにし、先にレイクと影の問題を解決させるべく泣きながらミネコ氏はペンを走らせた。

   

 一本で終わったレディコミ雑誌から「天使と悪魔の長い髪」を回収し、SFマガジンの原稿も入れ、何とか雑誌を埋めていく。
 予定していたゲスト同人原稿は、「パトロールスペシャル」と題された雑誌に収録されていき、完璧な仕上がりでリュウ増刊号は完成した。

    

 和田慎二に道原かつみ。いまいかおるに小林智美に佐々木けいこ。
 珍しい所では、亜砂都優子に野間美由紀まで、さらにはまさかのノヴェラから平山氏までもが登場する豪華な増刊号は売れに売れ・・・はしなかったものの、そこそこ話題になった。


風の尖塔を探し求めて三軒目

 気になるパトロールシリーズの最終巻がどうなったかと言うと、全く無関係のアニメージュに「風の尖塔(ミナレット)」は告知された。
 インターネットすらなく、予約をするにも地方にまでは行き渡らなかった時代、人気のない単行本の「忘れられた続刊」が書店に並ぶはずもなかった。

  中古コミック パトロールシリーズ 風の尖塔(6) / 山田ミネコ氏

 発売日に気が付いたファンは皆無で、運よくリュウ増刊号を手にしなかったファン
のみが「問い合わせて購入できた」パトロールシリーズの最終巻。
 当方も2年後くらいに、道原かつみ氏の単行本で掲載されていた「パトロールシリーズ1~6」の文字でようやく気が付き、問い合わせるもそれはそれは高圧的な徳間書店様は在庫を残しておらず、本屋に単行本が残されていないかと探し回る日々が続いたのは未だ鮮明に覚えている。

  中古コミック アフメット王国物語 / 山田ミネコ氏

 そんな読者と共に、苦労の日々を重ねたミネコ氏はストレス性の胃腸炎にかかり、産休以来久々の漫画家休みを取る。せっかく続いていたコミックノーラの仕事も引き揚げ、現実逃避に趣味の便箋を作って、同人活動に逃げる という日々は続いた。
 しかし、苦労の甲斐あってか「ふふふの闇」は思っていたより人気を博し、ビバプリンセスの看板作品へと姿を変えていった。


  閑話休題「鈴木光明氏の門下生紹介」