山田ミネコの最終戦争伝説な歴史


   
 定価 380円

 
 発行 1975/12/20
電子書籍化が待ち望まれる一冊。この中の「死神たちの白い夜」が話題になり、未だに高額取引されている。

第4章「白泉社の設立と花とゆめ創刊」

 別冊マーガレットが少女漫画雑誌史上初の100万部を達成し、70年代も中盤が見えてきた翌年の1973年。
 集英社・講談社・小学館と分かれていた少女マンガ出版社に、新たな会社「白泉社」が創立される。
     中古雑誌 花とゆめ 1976年06月05日号

 企業としては集英社の枝分かれ孫会社ではあったが、編集の小長井氏を立ち上げに据えて新時代を模索した少女漫画誌「花とゆめ」は、 別冊マーガレットの作家を新創刊の雑誌に起用するという作家の引き込みから始まった。
 別冊マーガレットを100万部雑誌に育てたのはミネコ氏の担当小長井氏。そして、別マまんがスクールを盛り上げた師匠の鈴木光明氏。

    「別マまんがスクール」の成立と鈴木光明展

 ミネコ氏も集英社をとるか白泉社に行くかの決断を迫られ、編集の小長井氏に付いていく形で花とゆめに執筆する準備に取り掛かる。
 その他の作家たちは別冊マーガレットに残るもの、白泉社との二足のわらじを検討するものなどに分かれた。

   中古コミック 銀色の髪の亜里沙/和田慎二

 同じ門下生のように連載は持てなかったものの、後年に至っても取り上げられる人気作「死神たちの白い夜」や未だにファンの多い童話風作品「きつねのてぶくろ」などの名作を書き上げ、貸本時代の漫画も掲載されるなど読者人気も高まってきた。

    時代を感じるタイトル、ゲハゲバ44ページ

 デビュー前から評判の良かった詩の才能も評価され、別冊マーガレットにミネコ氏の漫画は毎号掲載されていく。
 週刊マーガレットも72年に始まった「ベルサイユのバラ」で盛り上がりを見せ、翌年の「エースをねらえ」で更に火はついた。

  中古コミック ベルサイユのばら(1)/池田理代子

 対抗すべきライバルの白泉社の立ち上げは進んでいき、古書街が並ぶ神田神保町で少女漫画界の革命は進んでいく。
 しかし、1973年10月起こった石油ショックによる物価急上昇と紙不足が起こり、どの雑誌を見ても紙面は半分ほどに削減され漫画家達に衝撃が走った。

   中古 石油ショックを超える日本の危機/ 中村繁夫

 削られたページ数の鬱憤を晴らすべく、ミネコ氏は三日月会主催で何度か行われた「少女漫画フェスティバル」の参加を楽しんだ。
 書きたくても掲載してくれる誌面が少ない。という漫画家にとって致命的とも言える大事件ではあったものの、空いた時間は「花とゆめ」創刊に向けた技術と力を蓄える半年間となった。


未だに評価の高い作品「死神たちの白い夜」


 ネコさんの初期の傑作であり、和風ホラーとしては秀逸な事で話題の本作。

   
 恩田陸氏の著書に何度か取り上げられた事で話題になり、収録されている「高い城の少女」は一冊3000円のプレミア価格で、入手はかなりの困難。

  中古文庫 三月は深き紅の淵を / 恩田陸

 どうしても手に入らないと言う方は、「珠玉のミステリー・コレクション真夏の夜の夢」という2005年発行のボニータ別冊付録として再録されているので、こちらを追いかけてみるのもおすすめ。
 特に、作中にある不気味な詩はネコさんの詩の中でも随一の出来栄えで、魔女ホラーの魔法使いの夏と対の作風になっているので、比べながら読むとより楽しめる。

  中古コミック 高い城の少女 / 山田ミネコ氏
  ひとつ、一番目の門を開け。
  ふたつ、二人の死神が。
  みっつ、三匹のうさぎを連れ。
  よっつ、死の国からやってくる。
  おやすみよい子だ、ねんねしな。寝る子は死神が連れて行く

  中古コミック 魔法使いの夏 / 山田ミネコ氏
  赤い血が、唇から目にしたたり落ちる。
  そこに、真っ赤な苺がはえる。
  時計の針がない時は鈴が陰気な音たてる。
  ピストルの音もはや遠いもの。
  静けさが、闇とまじりあう。
  曼珠沙華の花が咲く日、今日は悪魔の日。
 一部詩だけを引用してみたので、興味のある方は是非本書を手に取って頂ければ幸いです。
 

  第5章「怪奇とロマンゴシックシリーズ」