山田ミネコの最終戦争伝説な歴史


 

 定価 380円

  

書籍版  1977/04/10
Kindle版 2015/01/30
長い付き合いとなるプリンセスコミックスの登場。鈴木氏のまんが教室本に、本作のネームが掲載されている。

第5章「怪奇とロマンゴシックシリーズ」

 オイルショックもようやく落ち着き、結婚に出産と人生の契機を終えたミネコ氏は小長井氏の厳しい指導の下で「新創刊された花とゆめ」を任されることになった。

   
 創刊号でいきなりカラーを飾った「ネコちゃんまんが劇場」シリーズは続いて行き、初期の代表作でもある「アリスシリーズ」が登場するようになると、どちらかと言えば大人向けだった作風のミネコ氏に子供のファンが付くようになっていく。

  中古コミック キャンディ・キャンディ(3) / いがらしゆみこ

 しかし、ミネコ氏個人の人気が出たのはいいものの、少女漫画全体でみると「花とゆめ」のスタートダッシュは遅れていた。
 老舗の講談社は「キャンディーキャンディー」の大ヒットで部数を伸ばし、小学館では萩尾&竹宮の「ファラオの墓」に「ポーの一族」という看板作品が控え、花とゆめは新創刊と呼ぶには今一つ読者を引き込めない、出だしの遅れを味わう事になった。

  中古コミック ポーの一族(1) / 萩尾望都

 そこで、小長井氏は怪奇とロマンゴシックシリーズという今までにない複数作家による連作を打ち出し、第一号山田ミネコ氏による「呪われた城」から連作は始まり、やがては「左の眼の悪霊」等の人気作を生んだ。

  中古コミック 左の眼の悪霊 / 和田慎二

 が、カルト的な要素の強い怪奇物は一部でしか人気を取れず、期待にあふれる漫画やスポーツ漫画を好む少女達の心を捉える事は出来なかった。
 困り果てた小長井氏は、特に人気のあった鈴木光明氏の門下生「和田慎二」「美内すずえ」を口説き落として古巣の別冊マーガレットから引っ張り出し、花とゆめの看板作品を書かせるべく動き出した。
 迎えた1975年12月。花とゆめ誌上に「ガラスの仮面」と「スケバン刑事」の2大連載作品がスタートを切る。

   中古コミック スケバン刑事(3) / 和田慎二

 未だに語り継がれる名作の登場に「花とゆめ」は部数を伸ばし、小長井氏の戦略は大成功。
 一方で創刊号でカラーにインタビュー、起死回生の怪奇シリーズはトップバッターという扱いのミネコ氏は人気が伸び悩み、更に「ガラスの仮面」と「スケバン刑事」によって読者層の年齢が上がった事もあり、アリスシリーズで子供向けにした絵柄を変えざるを得なくなった。

  中古文庫コミック 11人いる!新編集版 / 萩尾望都

 そして、ガラスの仮面たちが紙面を飾る少し前、ポーの一族で人気作家となった親友「萩尾望都」は、ミネコ氏があれほど憧れていたSF漫画家への切符を掴み「11人がいる!」は彼女の代表作品となった。
 親友の活躍を悔し涙で迎えつつ、それでもミネコ氏は懸命にペンを走らせていった。


  第6章「最終戦争伝説の登場」