定価 420円 | |
書籍版 1994/06/01 kindle版 2015/01/30 | 幼少期の津波ねーちゃんも登場するコミカルな一冊。 |
第13章「オウム真理教とハルマゲドン思想」
1993年、世間が忘れかけていた「坂本弁護士失踪事件」を取り扱った漫画があった。 世紀のギャグ漫画家と呼ばれた小林よしのり氏が描いた本作は、決して万人受けするものではなかったが内容の過激から話題になり、やがて掲載誌のSPA!との対立を迎え論争は続いて行く。 中古単行本 ゴーマニズム宣言1 / 小林よしのり 失踪事件の加害者扱いされた団体は怒り狂い、小林氏は漫画家としては唯一とも言える暗殺未遂の被害者となった。 その団体の名は、 オウム真理教。 秋葉原を騒がせた激安パソコン店「マハーポーシャ」を運営し、消費税廃止を掲げて衆議院選挙戦に出馬するという手広い事業と多数の信者を抱えたオウムは、雑誌ムーでも話題にされた。 中古エッセイ 破産者 オウム真理教 / 阿部三郎 翌年に起こった松本サリン事件を契機に、公証人役場事務長致死事件で一気にメディアへとその名前と異常性が知れ渡っていく。 そして95年、日本最大のテロ事件「地下鉄サリン事件」が起こり、教団は強制捜査を受け幹部や教祖は逮捕された。 このオウム真理教が打ち立てていたモノの中で、もっとも人々の記憶に残ったのが「ハルマゲドン思想」というキリスト教の終末論を取り入れた協議。 元を正せば「幻魔大戦」の映画版に影響され形成したモノなのだが、不幸にも教団の教義が 「インドやチベット密教」を中心としていたため、「山田ミネコ氏の最終戦争シリーズ」と極めて近いイメージの思想で、信者達は経典として手厚くもてなした。 が、経典扱いしていたわりに肝心の本は売れず、地下鉄サリン事件で「ハルマゲドン=悪」が日本中に広まったせいで、予定していた秋田書店の最終戦争シリーズ14巻の発売は緊急中止。 さらに、最終戦争シリーズは全て絶版。既刊の広告も消え「最終戦争」の言葉そのものが封印指定を受け、秋田書店のみならず、東京三世社以外の全ての出版社から「最終戦争」と「ハルマゲドン」を書く事を禁じられ、脅迫めいた電話まで出版社に鳴り響いた。 カルラ舞う文庫版の寄稿でも事件を振り返っている。 ついには古巣の白泉社にまで届いた電話にミネコ氏本人も恐怖を覚え、唯一続いていた東京三世社での「小説版パトロールシリーズ」の連載も雑誌休刊で途絶え、ついにミネコ氏は商業誌で最終戦争の続きを書く事を諦めた。 同人誌での活動、手術後の体力の低下に伴う仕事の減少。ようやく何とか力をつけ、最終戦争の続きを書くべく頑張りぬいたモノは、 風評被害のせいで全部なくなってしまった。 とは言え、すぐに単行本などから「ハルマゲドン」等の文字を消し、山田ミネコ氏の漫画をオウムと引き離したことで、更なる作家叩きにも発展しなかったため、秋田書店の配慮は正しかったと言えなくもない。 休刊後は同人誌として発行された。 そう、公表する場所が完全に無くなったわけではない。 積み重ねたストーリーをゆっくりと進めていけば、いつか誰かが声をかけてくれるかもしれない。 恐怖にも怯えず、コミケなどの大規模なイベントにも参加し、ビックローブに加入したミネコ氏は、90年代の漫画家としては珍しいインターネット活動にも手を伸ばした。 中古 前)霊界トラベルゲッター 呪禁師の森 / 山田ミネコ氏 しかし、肝心の漫画を連載してくれているひとみCCミステリーが休刊し、ミネコ氏はまたしても活動の場を失う。 時代は紙で読む漫画から、少しずつ携帯電話やPCで読める電子書籍へ、新刊は買わずにネットカフェへ、と変わっていき、出版業界は氷河期が訪れていた。 |
第14章「消えた漫画家、京極との出会い」