ウルフガイと電子書籍先駆者の軌跡



 
 幻魔大戦DNA
 定価 19980円

  
 ・少年ウルフガイ編にして超大作の完結編、完全予約制作を行いカレンダーやポスター特典付きで、第一巻はサイン入り。


第5章 約束の年月とお別れのアスキー

 そして訪れた、幻魔の原点にして運命の日でもある1999年。
 決定版 幻魔大戦は刊行され、新たなる角川となった春樹事務所名義で「アダルトウルフガイ」もシリーズ再録発売となった。
 その勢いで
ライトノベル界にも進出し、「月光魔術団」はウルフガイシリーズとしては初めてのティーン作品となり、電撃文庫へ移植発売される。


  中古ライトノベル(文庫)月光魔術団 満月魔法術(10) / 平井和正

 PDF電子書籍はバカ売れで、末はアニメ化かドラマ化か、いや映画も悪くないな。ついでにボヘミアンもよろしくね!


  
      と、


 調子に乗っていた平井氏の前に、
言霊通りの破滅の予言が叩き落ちた。
 前年の1998年、天下のアスキー様は経営破綻に陥り、何度か債権と絶望を繰り返すも上手く行かず、迎えたミレニアムに版元のアスペクトが業務再編となった。

  中古ライトノベル(新書)地球樹の女神 狼の足跡 (アスペクトノベルズ版)(6) / 平井和正

 13巻まで出るはずだった「地球樹の女神シリーズ」は、クリスタルチャイルドに続くとは何だったのか、無念の6巻で完結となり頓挫。
 大人気のはずの「月光魔術団シリーズ」は第二期まで何とか刊行したものの、肝心の
電撃文庫がさっぱりでそれはもう見事なまでに切られ、ついでに「月刊コミックビーム」で連載していた「漫画版の死霊狩りシリーズ」も"オレ達の闘いはこれからだ"的に打ち切られた。

  中古B6コミック死霊狩り(4) / 梁慶一/平井和正 

   逆に、今の時代なら売れそうな気もする

 そもそも女主人公の登場人物の大半が女性の作品が、冒険や異世界に溢れたライトノベルレーベルで受け入れられるはずもなく、コバルト文庫辺りだったら条件は違ったかもしれないが、新たなる恋人「集英社様」は全37巻の出版社に打ち切られたシリーズを再編して発売してくれるほどのやさしさには包まれていない。

 加えて、iモードの到来と定額制によるネット人口の増加により、活字離れが加速して「文庫より携帯小説」「紙のマンガより電子マンガ」の世代が世を支配した。

  中古単行本(小説・エッセイ)Deep Love【完結版】第三部 レイナの運命 / Yoshi

 PDF電子書籍は珍しい物ではなくなり、むしろデータが大きすぎる電子書籍が荷物となって、大長編の作品より手軽でサクっと読める単純構成の携帯小説を出版社は重きを置くようになった。

 改行を多用し、単純で短絡的なストーリー。と批判する作家や学者も居た、その手法を模倣し二番目の原石を掴もうとする出版社も溢れかえった。

 中古新書<<政治・経済・社会>> なぜケータイ小説は売れるのか / 本田透

 しかし、流行に敏感な女子高生達は「新しい時代の小説」に夢中となり、ライトノベル全盛期だった90年代は終わりを告げ、モバイル端末で読む
短編小説に心を奪われた。
 時代が逆転し、巻き戻っていく。
 PDF電子書籍のパイオニアと呼ばれ、電子出版のリーダーと言われた平井和正は、時代を先取りしすぎた。そうとしか言えなかった。

 出版社と仲違いし、紙媒体を捨てて、メガビタミン何とかに情熱を注いでいた作家に残されたもの。
 それは、「過去の栄誉」と「自費出版」だけだった。



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第6章 ウルフガイ完結までの、あと一歩


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